Syoyo Fujita's Blog

raytracing monte carlo

Month: November, 2009

HPC 産業の未来とレイトレ

事業仕分けにより、次世代スパコン事業が予算削減されましたね.
まあなんとなーく、私としても 1000 億もなんで必要? と思っていたので、しかるべき結果になったという感じでしょうか.

とまあ現状の感想を述べても面白くないので、今後の HPC はこうなる!みたいな話でもしてみたいと思います.
結果だけまず言うと、HPC の未来は、リアルタイムレイトレがキラーアプリとなるでしょう.

HPC の活用を広げていかなければならない

HPC インサイダーで、HPC の未来を考えているひとと話す機会を最近得ることがあったのですが、
やはり彼らインサイダーも、

「N 体とかタンパク質解析とか、もちろんそれはそれで大切であるが、
やはり HPC を活用していくにはそれでは足りない。もっと皆のためになり役立つものをどんどんとやっていかなければならない.
なので syoyo 君、HPC を使ったリアルタイムレイトレには期待している
(最後の行は意訳)」

と言っておられました.

今回の予算削減は、このようなキラーアプリを提案できなかったことによる理由も多かったのではないでしょうか.

HPC ハードのコモディティ化

CPU はもう x86 でコモディティ化しています.
最近は NVIDIA が HPC 路線へと経営の舵を大きく切り、Fermi によるパーソナル HPC チップを市場に投入しようとしており、
新規プレイヤーの参入により HPC の市場の商業化をさらに押し進めています.
(もちろん、Intel Larrabee の存在もあります)

いままで、
専用 CPU + 専用アクセラレータか、
汎用 CPU + 専用アクセラレータという構成だったものも、
もはや 汎用 CPU + 汎用アクセラレータに置き換わろうとしています.

現時点では、ハードの信頼性や性能という点では、Fermi や Larrabee はまだまだ疑問の余地がありますが、
これらは市場に叩かれて、いずれや堅牢なアーキティクチャになることが見えています.

このような流れでは、もはや HPC のためのハード開発事業は国費でやるものではなくて、
マーケットに任せるのが効率がよくなるでしょう.

もし国費でやるとしても、予算のほとんどは頭脳への振り分けに絞り、
プロセッサ設計やアプリを並列化しやすくするかのアルゴリズムの研究開発に注力し、
ハード製造は TSMC などの製造メーカーにやらせちゃうのがいいんじゃないでしょうか.

ただ、問題は頭脳に投資するとなると、突き詰めると天才数人に投資すればいいということになってしまうので、
多人数の雇用を確保するという効果が見込めなくなるということなんですよね.
ま、その天才数人が、ひらめいたアイデアで新しい市場を作り出し、新しい雇用を創出してくれればいいんですけど.

IO がネックだ

技術的には、HPC はいまは複数のプロセッサを並べて性能を出しているわけですが、
もちろん、単に並べれば並べたぶんだけ速くなるわけではありません.

昔からそうですが、一番の問題はネットワークなどの I/O 速度向上が CPU の速度向上に比べて成長が遅いこと.
そしてこれから、さらに I/O と CPU 演算能力の乖離はどんどんと広まっていきます.
どんなに 1 ノードの演算が速くても、いまじゃ I/O がネックになってしまう.

よって、今後は 1 ノードでいかに演算をこなせるかがカギになるでしょう.
(あ、消費電力もカギになりますね)

とはいえ、やはり 1 ノードで高い計算が行える新規の CPU チップ(ハード)開発は、いまとなっては費用などの面で非常にむずかしい.
そんなわけで、performance per watt がまあまあ高く、
比較的 CPU と密につながっている GPU などのアドオンカードでの演算アクセラレーションに注目があつまっています.
この流れはさらに加速するものと思われます.

NV が グラフィックスから HPC にスイッチしたのも、
近年 Tesla は商業的成功(HPC 系事業は黒字)しているが GeForce は赤字続きであった、
というのもありますが、このような HPC の時流もあるからかもしれません.

個人的には、ARM コアを沢山並べたシステムも面白いかなーと思いますが、
やはりこの場合もノード数がそれなりに増えそうなので、これも I/O がネックになってあまり現実的でないかも.

HPC のキラーアプリはレイトレ

だって、、、

– 大規模データの可視化するならレイトレで奇麗にかっこ良くみせたいでしょう.
– ボリュームレンダリングするならレイキャスでしょう.
– ボリュームも、人体モデルならサブサーフェススキャタリング効果加えたいよね. 仮想手術シミュレーションがよりリアルになるし. やはりレイトレが必要だ.
– 物理衝突計算? レイトレで再近傍探索!
– 映画産業、レイトレで CG 作るのに 1,000 台、10,000 台のレンダーファーム作っているんですから、もう HPC の有効活用みたいなもんでしょ.

おお、なんと HPC と相性がいいのだ、レイトレは!

まとめ

というわけで、まとめると,

– ハードはコモディティ化した. しかし頭脳(ソフト、アルゴリズム)はまだだ(頭脳に投資する余地と価値は十分ある)
– I/O がこれからもどんどんとネックになる. 1 node でどれだけ性能が出せるようなアルゴリズムを見つけられるかが勝負.
– なにはともあれアプリ. HPC でリアルタイムレイトレ!もうこれしかないっしょ!

ま、今回の事業削減が、単なるハコモノを作ることに流れていたカネがこのような方向に流れるようになる追い風になる気が実はしています.
(頭脳への投資に注力、レイトレなどの実用かつみんなのためになるアプリ開発に注力)

実際、今、HPC 野郎と、最近 HPC で(リアルタイム)レイトレをやっていろいろ面白いことができないか、いろいろ道を探っています.

レンダラインターン採用

以前にレンダラインターン欲しいなぁ… と書きましたが
(http://lucille.atso-net.jp/blog/?p=871)

このたび、我々にとって初のレンダラインターンを採用させていただきました.
レンダラに興味があり、かつインターンをしていただける時間を割いていただけるとは、とてもありがたいことです.

レンダラインターン(フォトリアル系、GI 系)なんて、
世界初!、とは言わなくとも、世界でもかなりまれな存在ではないでしょうか?
(でも、リアルタイムレイトレ系をやらせたら世界初、かもしれませんね 🙂 )

インターンもそうですが、最近はだんだんといろいろレンダラ、リアルタイムレイトレに道が見えてきてきています.
だんだんと面白くなってきました. (まあまだどうなるか分かりませんが、、、)
ここでどう先行者利益を確保していくか、そろそろ本気で考えていかなくてはいけませんね(レンダラ財団設立資金確保のために).