ヘッジファンドを作ろう!

by syoyo

「サブプライム問題とはなにか」を読んだあと、
たまたま本屋で「最強ヘッジファンドLTCMの興亡」[1]
の原書「When genius failed」[2] を見つけたので購入したことから、
少し数理ファイナンスをまた勉強したくなりました。
# ちなみに私は LTCM 関連はこの Roger Lowenstein が書いたものしか読んでません。
# ちまたにはマンガで取り上げたものもあるので、LTCM 関連も再度いろいろ読みあさってみたい。

「天才数学者はこう賭ける」も再度読み直しています。
早速昔に自分で書いたエントリ [3] に不都合発見。

– リッジ -> エッジ
– 期待値が 1 以上 -> 正確には幾何平均で考えて期待値が 1以上

です。

Capital Decimation Partners

さて、そこで今回は、脅威の年利 40% を実現するヘッジファンド投資手法
“Capital Decimation Partners”の紹介です。
# Decimation というのがなかなか難しいのですが、
# 日本語訳すると “テメーらの資産を皆殺しにして食い物にしてオレら突き進むぜパートナー”という感じでしょか

Lo, Andrew W.,
“Risk Management for Hedge Funds: Introduction and Overview”
(June 7, 2001).
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=283308

“Capital Decimation Partners”, 略して CDP は MIT 教授の Prof. Andrew Lo により提案された
投資手法です。ちなみに、Prof. Andrew Lo は実際に自分でもヘッジファンドを運営しており、
そのヘッジファンド投資で成功してみせ、自身の研究の正しさを市場で証明しているようです。すげぇ!
# ここ最近のサブプライムショックでどうなったかは分かりませんが…

CDP が達成する年利 40% というと、複利で運用すると資産は 10 年で 29 倍、20 年で 836 倍にもなります。
Warren Buffer の Berkshire Hathaway, Claude Shannon,
Ed Thorp の裁定取引運用の先駆け Princeton Newport Partners
のリターンをも上回ります。
まあそんなわけでコンスタントに年利 40% でるというのはそれだけすごい。

CDP の中身とはではなにかすごいことをやっているのかというと、じつはそうではなく、
行使日が三ヶ月以内で、行使価格が 7% OTM(out of money) な
S&P 500 プットオプションをひらすら売るという単純な戦略です。
ただ、どれだけの量プットを売るかは、そのときの状況によるらしい。
それで年平均 40% 以上と、S&P 指数平均を上回るパフォーマンスを上げてしまいます。
シミュレーション投資期間中には、LTCM 危機がありましたが、その危機も乗り越えたとのこと。

オプション理論については、
インドでは幼稚園のときに MBA 知識の一環として教わるそうですから、
日本人も知っていて当然ですよね。なのでここでは解説不要とします。

CDP はサブプライムショックを乗り越えられるのか?

さて、基本的に米国の株式市場は上昇リスクがあるので、
OTM なプットをひたすら売っていくのは、有効な戦略だと思います。
ただ、一度でも大きな大暴落が来てしまうとヤバいのではないかなーと思います。
(LTCM 危機のときは monthly で -19% くらいのドローダウン)
本来であれば 1999 年以降もこの CDP モデルがうまくいっているのか、
Prof. Lo にはフォローしてもらいたいところ。
特に、今年のサブプライムショックでの暴落を CDP は乗り換えられたのか、
ちょっと気になります。

# ちなみに CDP を(今の)日経オプション市場でやるのはおすすめしません。
# excercise が 500 円刻みと開きすぎなのと、日本の株式市場自体が上昇リスクが無いためです。
# ただ、下落リスクはあるので、コールオプションをひたすら売るのは有効かも ^^)

ヘッジファンドを作ろう

ちなみに、CDP のようなもので(というと正確かどうかは分かりませんが)、
市場にフツーに転がっている投資商品をうまーく組み合わせることで、
腕のよいヘッジファンドのリターンを実現するものが
ヘッジファンド複製(hedge fund replication)と呼ばれていて、近年注目されているようです。

ここ最近、各種金融機関がぞくぞくと商品化を始めていて、
面白くなってきているとのこと[4]。

以外と自分でもヘッジファンドを作るのは難しくなさそうです。

ちなみに、ヘッジファンドのリターンの解析で重要になる概念がアルファです。

「アルファ」というと、え?半透明度ですか?というのがグラフィックス野郎の
共通認識だと思いますが、金融の世界では、アルファというのは、
そのヘッジファンド運営野郎のウデ、
つまり市場の動きにかからわず生み出すことができる絶対的なリターンを表現する値なのだそうです。

それがヘッジファンド複製では複製できるのだから、わざわざ高い報酬を支払って
有能なヘッジファンド運用野郎を雇わなくてもよいということになるのだとか。

レンダリングアルゴリズムにも、こういう絶対的なアルファ、
つまりどんなシーン状況でも絶対にこれだけはレンダリング品質を達成しますよ、
絶対にこれだけの時間内で計算してみせますよ、
みたいな手法を見つけてみるのも、面白そうです。

[1] http://www.amazon.co.jp/dp/4532193281

[2] http://www.amazon.co.jp/When-Genius-Failed-Long-Term-Management/dp/0375758259

[3] シャノンの悪魔 vs 効率的市場仮説
http://lucille.atso-net.jp/blog/?p=252

[4] ヘッジファンド複製 ─伝統的ヘッジファンドへの挑戦者─
http://www.nri.co.jp/opinion/kinyu_itf/2007/itf200710.html

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